3月に「2021年版中小企業白書・小規模企業白書概要(案)」が出されました。それをもとに、小さな会社のIT活用・WEB活用について考えてみます。

コロナが経営環境や事業環境におよぼす影響は業種ごとはもちろん、会社ごとに違ってきます。コロナ禍が自社にとって危機となっているのであれば、それを乗り越える取り組みが必要です。

2021年版中小企業白書・小規模企業白書概要(案)の2ページ目。概要の第2部にある「2.事業継続力と競争力を高めるデジタル化」に注目してみます。

2.事業継続力と競争力を高めるデジタル化
生産性向上や働き方改革に加えて、事業継続力強化の観点からも、中小企業におけるデジタル化の重要性が急速に高まっていることを指摘。ITツール利活用の現状と課題について明らかにするとともに、デジタル化の取組を成功させる上で重要となる取組(例:意識改革、人材活躍、業務変革、制度見直し、社外との連携など)に着目して分析。

2021年版中小企業白書・小規模企業白書概要(案)/中小企業庁

業務のデジタル化はもはや業務改善目的にとどまらず、事業継続に関わることだといえます。数年のうちに事業をたたむ予定の会社であればあえてデジタルから距離をおいて静かに終わりを迎えるのもあると思いますが、3年、5年、10年、20年とこの先も続けていくつもりの一般的な会社であれば、デジタル化から逃げていては事業継続はありえないといえるでしょう。

おもしろいのが、デジタル化の成功させる上で重要な取り組みの例として、「意識改革、人材活躍、業務変革、制度見直し…」とデジタル云々と関係のない従来からある取り組み課題が挙げられている点です。当社でも常々お伝えしていますが、小さな会社のIT化の壁は、既存の枠組みや働く人や組織の現状維持バイアスによるものだと考えられます。

次の資料でもう少し細かく見てみましょう。

2021年版中小企業白書・小規模企業白書概要(案)/中小企業庁

【図1】のコロナ前後でのデジタル化に対する優先度の変化をみてどう感じるでしょう。社会の変化に対してまだまだ意識が低いと言わざるを得ず、この先どんどん二極化が進み、勝ち組と負け組に分かれていってしまうのではないでしょうか。

【図3】のデジタル化推進に向けた課題を見てみると、大きな問題は「資金不足」ではなく、組織文化の課題が大きいことを認識している点は興味深いです。クラウドサービスの充実で手段や予算のハードルは低くなっているものの、それを活用する人・組織側に課題があることを示すデータです。

次の資料ではデジタル化の成果についてまとめられています。当然のことながら、デジタル化に積極的な方が業績にプラスになっています。【図2】をみると全社的に取り組んだ方が生産性は高くなっていますが、必ずしも一気に全社体制で取り組む必要はなく、小さくはじめて徐々に拡げていくこともひとつの考え方だと思います。

2021年版中小企業白書・小規模企業白書概要(案)/中小企業庁

業務のデジタル化、事業のIT化を推進するための環境は十分整っています。毎年「IT導入補助金」などの支援制度も続けられています。もはやデジタル化を阻む要因は、もはや国や社会などの環境ではなく企業の中にあります。大変なコロナ禍ですが、見方を変えると腰の重かった日本のデジタル化を10年早く進めるきっかけを与えてくれました。その流れにしっかり乗って、これからの事業展開を考え、有意義な働き方ができるように考えていきたいですね。